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『力・11』(キケルカ、ゴドエリ)-1

「怖い顔!」
まさに今、敵の潜む屋敷の前、
車から降りて改めて顔を見合わせた場面のこの一言。
フィオーレの13代、ゴドー・ジェキンスとしての、
決意をした早々の、エリックのからかいに眉を顰める。
「エリー」
「エリック」
「エリック」
呼ぶとこちらの意を察し二三歩、エリックはゴドーの元に来た。
見上げてきたその顔が少しだけ強張っている。
「っ?!」
さらさらと柔らかな髪の、
触り心地の良さそうな頭を撫でてみた。
「何?」
「・・・何となく」
「犬扱いしないでくれる?」
指摘され、それが飼い犬に行う愛情表現とまったく同じであったことに気づき、
そのゴドーの所作を、エリックが覚えていたことに気づき、思わず顔が火照る。
「本当は俺の目の届かないとこには、
 やりたくない、でも、
 おまえの主人は俺じゃない」
「ああ」
そこで肩に、とん、と重みが来たため固まった。
「死んだら許さない」
「死なねーよ」
少し掠れ気味のエリックの声は、エリックの不安をゴドーに伝えた。
ゴドーがゴドーとしてフィオーレの危機に、
黙っていられないことを許す代わりの、条件。
死を恐れる兵士は弱くなるのだ。
弱まっても尚、勝たなければならない。
門が完全に開くと同時に、サリトがふらりと中に消えた。
ジャコブはエリックという主人を前に、
従者らしく一歩引いた位置で待機している。
「じゃぁな」
「・・・うん」
通いなれたフィオーレの屋敷の中へ進む、
足はあまりにも自然にルカスの元に行く。
主人を友人として、守ろうとしたのかそれとも、
主人として守ろうとしたのかは未だわからない。
サリトの元に行った自分の、
行動は誰かに予測されていて、
もしかすれば今もまた誰かの策の元、
自分は動かされているのかもしれない。
同じ策の元、動く兵ならば、
主人の策の元で動きたい。



「さてと、じゃぁ俺達も行きますか」
「えっ?!」
「がむしゃらに動いても危険なだけだからね、
 ひとまずマルクス・フィオーレに会って、
 現状を知らないと・・・」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
「うん?」
「これはフィオーレの問題です、
 貴方が危険を犯してまで関わるべき事じゃない、
 俺は・・・、貴方を救うためにここに来たのであり、
 貴方の我侭に付き合うために来たわけじゃ・・・」
「・・・あ、ごめん、そっか、
 凄い自然に巻き込もうとしてたけど、
 うん、そうだよね、じゃぁここで。
 今日は本当に助かったよ、・・・ありがとね!じゃ!」
「いや、だから・・・」
「大丈夫、サリトの脅威は去ったし、
 辱めみたいなことは受けないと思うよ、
 ヴェレノの面汚しになる心配はない。
 ほら、俺だって死ぬのは嫌だし、
 怪我も困るから上手く立ち回るつもり、
 あの時は色々読み違いがあって、
 あいつのことで・・・気も焦ってたし」
「あの、エリックさ・・・」
「あ、トートに遭ったら『ハンクが超ピンチ、
 マルクスが号泣してる』って伝えといて!
 たぶん空飛んででも駆けつけて来ると思うんだーあいつ」
「俺は・・・」
「意外と友情に熱いタイプなんだよね、
 弟にも見習わせたいよ、まったく!」
「俺はまだ帰りませんよ!」
「ん?」
「貴方を気絶させてでも、連れ帰ることに今決めました」
「・・・」
瞬時、しゃがみ込んだエリックの策は、
エリックにしては幼稚すぎて、ジャコブの判断を鈍らせた。
そのためエリックは手に掴んだ砂を、
思い切りジャコブの顔めがけて放ち、
逃げ出すことに成功したが、
全力疾走でフィオーレ邸を訪問するはめになった。
「エリックさん!」
後ろで、ジャコブの叫びが聞こえる。
「恥ずかしくないんですか、こんな幼稚な」
「うるさいよ」
声を張り上げれば位置を知られてしまうので、
小さく返答をし、スピードはそのまま。
ゴールのようにそびえていた門を駆け抜けた瞬間は、
緊急の事態といっても、結局走っている状況が同じなためか、
徒競走のタイムを計る時の感覚に似ていた。
「!!」
門を抜けてすぐ、猛スピードで、中庭を走り抜ける際のことだった。
見覚えのある後姿。
「・・・?!」
気配を感じたのだろう、前方に発見したサリトは振り返り、
これでもかと顔を顰め腕で身を守るべく体勢を取る。
その肩を掴み、滑るように転んだ。




11月3日(土)10:16 | トラックバック(0) | コメント(0) | 力シリーズ※メイン | 管理

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