| 『力・11』(キケルカ、ゴドエリ)-2 |
|
| 「何で?」 完全に別行動となったはずのエリックが、 後ろからやって来た不思議に、サリトは素直な疑問を口にする。 「いいからじっとしてて」 しかも揃って庭の、茂みの中で息を潜めている。 エリックの従者の足音だろうそれが、遠のくと、ほっと、 息をついて二人、力を抜き顔を見合わせる。 「何で?」 「・・・うん、まぁそこはね」 再び繰り出した疑問は今度は、 軽く流されて消えてしまった。 何故合流して来たのか、何故従者から逃げているのか、 何故自分をこう親しげに扱っているのか。 「ちょっとおまえに相談があるんだけど、 もし駄目だったらマルクス・フィオーレにあたる」 「何」 「部下をね、数人使わせて欲しい」 「あー、ふざけんな?」 「サンピエトロ・ボーンがどうなってもいいの?」 「・・・」 「檻壊すとか言って、場所がわからなきゃ意味ないでしょ、 俺は知ってるよ、彼がどこに居るか?」 真面目な顔で次から次、エリックの攻撃に頭痛さえして来た。 「どうしてここまでムカツク奴に育ったの?ねぇどうして?」 「あはは、どうしてだろうねぇ、・・・お国柄?」 淡々と笑顔で、サリトと対峙するこの男は、 キケロやゴドーのように力があるわけでも、 マルクスやルカスのよう、権利があるわけでもない。 「何に使うわけ?」 「フィオーレ救済に」 「何させんの」 「外門の周りをあるガスで固めて、 敵を外に逃げられないようにするんだよ」 「ガスって・・・」 「ヴェレノに救援呼ぶときに持ってこさせた、 三日眠る奴ね」 「・・・」 「一応周辺の住民、邸内に避難させてって、 連絡はしといたし、まぁ逃げ遅れても眠るだけだからね」 「どうして貴族ってこうやること派手なわけ」 「おまえには勝てないよ、俺はただ犯人を逃がしたくないんだ、 フィオーレを脅かすものの根本を探して潰したい」 「っていうか、君出身ヴェレノじゃなかった?」 「それが何」 「・・・」 「せっかく今俺、幸せなんだからさ、 その幸せ崩されたくないじゃん?」 「ふーんおまえ幸せなの」 「幸せだよ」 「・・・俺も」 「珍しく気が合ったね」 にやりと、笑って見せたエリックに、 サリトは溜息をつき携帯を渡した。 「うわ、潔良いね・・・」 「見られちゃ困るのには鍵つけてるからいいの」 「俺そういうの突破するの大好きなんだけど」 「・・・おまえの倫理観に任せるよ」 「うわ、嫌な言い方」 喋りながらさっさと、サリトの名で命令を送信するエリックに、 サリトは妙な心強さを感じた。 それが当主という地位を持って、生まれてきた人間の力なのか、 無条件に頼ってしまいたくなる空気。 過去、キケロに纏わる非常事態の時も、 エリックの助けが来た時に何もかも、 救われる気持ちになったのを覚えている。 「ところでアレ、誰だと思う?」 「うん?」 中庭をうろうろと、ふらつく背のひょろ長い、 痩せ型の黒髪。サンピエトロ・ボーンの、独特の雰囲気は、 遠めにもわかった。 「サンちゃん!!」 思わず、立ち上がったサリトの姿と声に、 ボーンが気づき小さく口を開ける。 予めボーンには、連絡の行くまで門の傍で、動かぬよう言ってあり、 それがサリトからの「どこ?」というメールだった。 多少の計算の違いはあったものの、 ボーンの身が予定通り無事でエリックはほっとした。 本当はサリトがエリックに対し、条件を飲んでから送らせるはずだったメール文。 エリックはサリトが、ボーンに電話でしか連絡を取らないことを知っていた。 「何でいるんだ?」 「助けに来たんだよっ」 長身のボーンに対し、飛び上がって抱きついたサリトは、 親に縋る子どものようだった。 「これであいこかな」 エリックは呟くと携帯を閉じた。
*
| |
|
11月3日(土)10:14 | トラックバック(0) | コメント(0) | 力シリーズ※メイン | 管理
|
| この記事へのコメント投稿はできない設定になっています |