| 『力・12』(ゴドエリ、他)-3 |
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| ルカスと首謀者のイメージでは、 敵味方の区別なく殲滅されると思われた通信室は、 ソニアの情報のお陰で数人の裏切り者(もとい潜入者)が攻撃されただけ、 あまり大掛かりな闘いにはならなかった。 それでも8名の傷者と2名の重傷者を出した。 ハンクとゴドーという異例の二人のゴドーの、 攻撃に居合わせた敵の頭には、 憤りと無念が同時に発生する。 警備画面に映る、明らかに自分の元、やって来る兵士達を眺め笑う。 逃げるには仲間を散りばめすぎた。置いては行けない。 「何もかも終わりだ」 「何か言いました?」 呟きに横の、何の罪もない同僚が反応する。 よもやこの場へ、兵達が突入してくるとは思わぬ平和な顔。 いや、自分達の起している騒ぎへ悩まされている顔。 せめて自分達の顔が割れていれば、救えた友人だが生憎巻き添えだ。 「ミスター!逃げて下さい!!!」 兵の来る前、思いがけず戦闘員を担当していた仲間が戸を開けた。 いざ攻め込まれれば無力な自分を主人という理由で逃がしに来たらしい。 「ケプラー・・・」 彼はジェキンスの姓を持ち、ゴドーを目指す人間として、 フィオーレの地に馴染んだ顔だったが、計画の遂行を迷ったことはなかった。 「君は馬鹿だなぁ」 「馬鹿は馬鹿なりの考えを持ってます」 懐からもう、何の躊躇いも無く出した銃を数発、 近づいてきているらしい兵に放つ。 部屋の中はそれで混乱に陥り、怯えた通信員が行ったり来たりを始める。 「君だけでも逃げろ」 戸に走り、声を上げる。 他の仲間は先程から通信が切れていた。 良い判断だと思う。 「だけ?」 そこで目を見張る。 作戦の失敗をどこで知ったのか、 戸の前には動ける仲間達の顔があった。 「ゴドーがなんです、 俺は一度アウレリウスを経験している」 一般にゴドーより上となる力を示す名だった。 潜入を繰り返した身は並の強さではないのだ。 「鍛えられ方が違うんですよ、 こんな田舎の兵、蹴散らしてやる」 「無理はするな」 「はは、まず銃が怖くて誰も近寄れませんかね」 ケプラーが先陣を蹴散らせて、その隙、 集まった8人が退路をつくるつもりらしい。 この策はケプラーを捨てに行こうとしている。 「俺が逃げたところで、 何になる」 「希望に」 「・・・」 言い残し、走り込んで行く背が細い。 それは今まで強く頼りになる、力を備えた背中だった。 今回何故その背が、あまりに細く映るのか。 じりじりと迫って来ていた防弾盾の景色を、 崩そうとケプラーが足を上げた瞬間だった。 「っ」 先手を打ったのは彼ではなく兵、 15でゴドー・ジェキンスの名を継ぎ、 ゴドーとして歳の近い次期当主のため、 育てられている青年兵だった。 ケプラーの反撃が鋭く命中したが、 気絶どころかさらに食らい付いて来る。 一撃目で恐らく銃を持つ腕を攻撃されたのだろう、 ケプラーの足元に銃が落ちている。 早く拾え、と上げそうになった声が、 青年兵がすかさず、足でそれを遠くに蹴った瞬間塞がれる。 目の前が暗い。まだゴドーとして、働いてもいない青年の、 訓練だけの戦闘力が、ケプラーを押している。 青年が実践を覚えたら、間違いなくこの地に君臨する、 脅威としての役割を果たすだろう。 あれが未来のフィオーレのゴドーになる。 それだけで息が苦しくなった。 「トム・バーレン、君の裏切りは残念だよ」 真横からした声はハンク・ジェキンスのものだった。 「ゴドーか・・・」 「フィオーレの平和のため、 君を捕えるよ」 最後に聞いた声の悪戯な調子は、 此処の所の計画の進行に頭を抱え、 ぴりぴりとしていた彼に、以前の、 柔らかい空気を取り戻していた。 自分達の志のため、不幸になる人間が居ることを覚悟していた。 だが自分達の破滅のため、幸福になる人間が居る。 それを考えると破滅するのもまた良いかもしれない。 「無念だな・・・」 目の前、取り押さえられた仲間達に向けて、呟くと同時に、 腹に衝撃が来て意識がなくなる。
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11月3日(土)10:03 | トラックバック(0) | コメント(0) | 力シリーズ※メイン | 管理
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