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『力・12』(ゴドエリ、他)-4

「歯の裏に毒物を仕込んでいたらしい」
墓の前、項垂れたマルクス・フィオーレに向かい、
ゴドーは言葉を捜した。
敵の主格は目が覚めるとすぐに自害してしまい、
残された潜入者達はヴェレノへ送られた。
主格が唯一機密を握っていたのだろう、万一に備えて、
いつでも彼は死の傍にいたのだ。
情報の漏洩が何よりの心配であったのだろう、
仲間の手で殺された参謀の潜入者と、
自害した主格、通信員の潜入者。
「フィオーレにも、死は存在するんですね」
「するさ」
ハンクが屋敷の内を、マルクスが外を担当し、
ゴドーはマルクスに着いた。マルクスは騒ぎの中撃たれ、
まだ本調子ではないのだ。
「忙しさが悲しみを、少しでも紛らわすといいな」
「ハンクさん?」
死んだ参謀と一番に仲が良く、今回の痛みを一番に受けた男。
参謀は若い幹部として、ハンクとは互いに刺激し合い、支えあう仲を築いていた。
屋敷の片付けや怪我人の整理、情報処理や人事異動。
エリックの策のため、屋敷の内に避難させられていた周辺の住民の、
手伝いもあって事態は思ったより早く収集されている。
サリトの隠し持っていたという薬物は、
騒ぎの中、あっという間に闇に葬られた。
すでに出元が検挙されていたことと、
運んで来た人間がフィオーレの兵士であること。
マルクス・フィオーレは森で見つけた、とだけ発言をした。
全てが丸く、収まって行こうとする中、
ただゴドーの心に影を落しているのは、
エリックがヴェレノに戻らされたことだった。
部下による強制的な連行だったらしい。
ヴェレノの当主の息子であるエリックが、
危険な目に遭った。これはもう二度と、
エリックがフィオーレへ帰らなくなっても、
可笑しくない条件だった。
「ゴドー君?」
「・・・」
「聞いていなかったか?」
「は・・・?」
「これはヴィンチのほうで捕えられた主格から得られた情報なんだが、
 一連の敵方は繋がっているだろうと思う。
 ・・・彼等は、国を作ろうとしているらしい」
「・・・国」
飛んでいた意識がすぐに戻される。
それほど画期的な企みだった。
「今は崩壊して、地域ごと、
 ばらばらの状態になっているだろう、
 かつてはあのヴェレノとも同郷である、
 大きな国だった、
 その状態に、
 また戻るには地域の反発を、
 小さくし、そして地域自体を、
 潰さずに吸収する必要がある、
 だから我々、
 兵が邪魔なんだろう」
「・・・」
「わからんな、国を作りたい連中は、
 果してそこまでして、何故、国という、一つのものになりたいのか
 この地域社会制を、国制にして何が変わる」
「・・・あの」
発言をしていいのか、迷ったが口が動いた。
「強ぇとこが・・・弱ぇとこの、
 面倒見るようになるんじゃないすか」
「・・・何?」
「俺の生まれたとこは、
 酷いとこで・・・、普通に道端に死体転がってたり、
 でも、貧乏で弱ぇから仕方ねぇっつーか、
 そういう地域で、だからその、豊かなとこがもし、
 自分とこだけじゃなくて、
 そういうとこの面倒、見てくれたら嬉しい、
 じゃないすか、・・・」
「・・・」
「フィオーレはそういう、難民、
 つーか、逃げて来た奴等を匿ってくれる、
 優しいとこですけど、でも・・・」
本当は誰にも、言うつもりのなかった憤りで、
それは後ろ暗い、甘えた感情なのではないかと、
思えてなかなか口にできない。
「確かに、他地域の面倒を見たりは、
 なかなかできないな」
それでも、寮に時々、顔を出してくれていた相談役、
マルクス・フィオーレになら、と心が緩む。
フィオーレの一族はどこか、
包むような安心させるような力を宿し、
本音に迫ってくる。



11月3日(土)10:02 | トラックバック(0) | コメント(0) | 力シリーズ※メイン | 管理

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