| 『力・12』(ゴドエリ、他)-6 ※完結 |
|
| 「何作るんだ?」 「夕飯」 「あぁ・・・そんな時間か」 「いつもどうしてるの」 「寮のとこに・・・」 「ふーん、俺のつくるのとどっちが美味しい?」 「・・・寮の」 「あっそ」 些細な攻撃を意に介したふうもなく、 作業を始めるエリックにやっと、諦めをつけて近づく。 後ろから抱きしめると腹に強烈な肘鉄が返った。 「俺はおまえのこと正直大好きだけどね、 そういう関係になるつもりは微塵もないよ」 「残酷な奴だよな、おまえは」 「そう?・・・あ、ヘラ取って」 「・・・ん」 「うわ、埃だらけ」 エリックの部屋を初め、 エリックの残したもの、 すべてに触れずに来た。 それが裏目に出た。 「ねぇゴドー」 「何だよ」 「先輩が謝ってた」 「あ?」 「おまえは安っぽく許したみたいだから、 俺が解説してあげる」 「・・・」 「先輩にとってはねぇ、おまえは従者じゃなくて、 友達なんだよ、従者の前に、友達なの、 対等でいたいんだよ、 っていうか、単にあの人が意地張ってただけっていうか、 恥ずかしかったんじゃない?」 「・・・何だそりゃ」 「おまえはたぶん助けてって言ったら助けてくれる奴だよ、 でもだからってさ、 素直に甘えられないことだってあるでしょ、 おまえと対等でいたかったら尚更」 「・・・」 「って、喋ってる間にまたくっついてこないでくれる?」 「夕方で冷え込むからほら、気を遣って」 「自分の体温あれば充分だから・・・また肘鉄欲しいの?」 「エリー」 「エリック」 「何緊張してんだ?」 その言葉で着火。 エリックの怒りはゴドーを蹴り飛ばした。 「あーっ、もう! 元気ないと思って甘く見てたらっ! そりゃ緊張もするよ、おまえのほうが力強いし、 でもここしか逃げ込める場所ないし? 何かしたらまじで毒盛るからねっ」 「・・・」 なら何かした後の飯を食べなければいいんじゃないだろうか、 という反撃の言葉を飲み込む。 「悪かった」 気持ちが沈んでいたのも手伝い、 言葉のセーブが利かなかった現状。 普段ならエリックの不安な気持ちを察し、 下手にちょっかいを出さなかったろう。 相当に心が不安だったのだ。 「他所者どうし仲良くやろうぜ」 「は?他所?」 「俺もおまえも純粋なフィオーレの人間じゃない」 「あぁ、やだやだ、これだから馬鹿は! あのねぇ、戸籍って知ってる? 戸籍さえ持ってれば俺もおまえもフィオーレ! 法律で守られた立派な市民なんです!!」 「・・・」 意味の違いを訂正する気も起きず、 溜息をつくとエリックの顔は不機嫌に歪んだ。 「元気出せよ」 「・・・」 「元気出せ・・・」 再び口にして、むず痒くなったのか、 エリックは向きを直し、こちらに背を向ける。 「ああ」 返事をすると何もかもが、晴れやかな軽いものになった。 心の不安は寂しさ。危うくルカスという友を、 主人だからという理由で失うところだった。
終
| |
|
11月3日(土)09:59 | トラックバック(0) | コメント(0) | 力シリーズ※メイン | 管理
|
| この記事へのコメント投稿はできない設定になっています |