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『力・4』(エリック+ゴドー+キケルカ)-1









一人目を殴った時、本能が歓喜した。
日が落ち、いよいよ暗くなった小屋の中、
小屋の外にある赤みの強いオレンジの外灯だけが、
広い窓から差込、ゴドーの横顔を照らしていた。
林の奥の小屋は、廃墟寸前の禍々しさを持って、
ゴドーと複数の憐れな生贄を宿している。
「まだ、こねぇのか」
「すいアせん!」
伸びていたり怯えていたり、
または媚びるよう笑みを浮かべていたり、
サリトの下した敵はゴドーの機嫌を伺っていた。
室内、ゴドーから数メートル離れ、
生き残りがびくびくと突っ立っている。
用意された椅子に座った姿勢で、部屋の中央、
たくさんの屍に囲まれながら、ゴドーは自分の影が、
鬼のように黒いことに見て見ぬふりをしていた。
倒した大勢の中、骨のあると見えた、
恐らく幹部だろう数人は報告に行くためか、
または援軍を呼びに行ったのか消えてしまい、
後は、二発の殴打で伸びるような、
ゴドーにしてみると小物でしかない者だらけで。
唯一人部屋の隅で動けぬ身を横たえ、
ひたすらゴドーを睨みつける青年が、
ゴドーに苦戦を強いたものの一人だった。
「・・・おい、どうしてそう睨むんだ、
 悪者か、俺は」
苦笑まじり、声を掛けたが鼻を鳴らされ、
当然の反応ながら悲しい気持ちになる。
「サリトが来たら・・・おまえなんか」
「そのサリトがこねぇから困ってんだよ、
 おまえんとこの王は何してやがるんだ」
頬を赤く腫らし、ぐったりと横たわった青年の、
痛々しい姿や他、通って来た道々に放られている、
無残な怪我人、そしてこの部屋の中で、
白目を向き折り重なった障害としての人間の山。
ゴドーの痛めつけた他者の存在は、
ゴドーに少しの高揚感と、
罪悪を感じない、心への失望を与えていた。
「俺は、強かったんだな・・・」
「厭味かよ」
ふ、と笑えば心底悔しげ、
青年は歯を食いしばり、ゴドーを睨んだ。
「才なんて・・・」
「あ?」
「クソ喰らえだ」
「・・・」
才、それは恐らく喧嘩の腕のことだろう。
青年の動きには型があった。実践の向こうに鍛錬が見えた。
つまり、力、これに関してゴドーは才を持っているらしい。
少なくとも目の前の青年よりは。
「おまえ強かったけどな」
「・・・ッ負かした奴を強いって言うなよ、同情なんか欲しくねぇ」
「悪い」
フィオーレに引き取られてすぐ、
将来の従者として、召し上げられたこと。
群れを抜いていたという適性というもの。
従者を代々身体能力で召すフィオーレの、
誇る最高従者の名、ゴドー。
代と共に受け継ぐ名で、しかしゴドーの名は、
元からゴドーであり、それは偶然か必然か。
ルカスは自分をゴドーと呼ぶが、
それは従者としてなのか友人としてなのか。





12月5日(水)01:22 | トラックバック(0) | コメント(0) | 力シリーズ※メイン | 管理

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