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『力・4』(エリック+ゴドー+キケルカ)-2





「ふーん」
目の前、青の目が何の感情も示さず、
胸の底を抉るよう刺さってくる恐怖。
恐ろしく美しい男の視線が、
ボーンを縮み上がらせている。
「それで、
 君はそれを聞いてどう思ったの」
「や・・・喧嘩は怖いよな、と」
「なるほど、その通りだ、
 怖いよね、怪我人も出るし・・・、
 止めようとかは?」
「そんなの・・・、
 聞くような奴じゃない」
「へぇ?
 君の意見、聞き入れられないの?
 普段からそう?
 いつもはどういう付き合いしてるの」
「・・・まぁ聞き役、というか」
「聞き役ねぇ」
二日前、サリトから決闘の報告を受けた時から嫌な予感はしていたのだが。
定休日にわざわざ店の掃除に来たボーンの前、二人の男が姿を見せるまで、
それはぼんやりとした不安でしかなかった。
一人は見るからに暴力を臭わせた、凄みのある空気を纏っており、
一人は人形のように美しい顔だったが、毒のある気配が隠せていなかった。
「君以外にもそういう・・・、
 相談相手はいるのかな、彼」
「さぁ・・・っていうか、
 俺~、は、相談?っていうもんを、
 されてるわけではなくて、
 その、・・・牧師的な、
 扱いを受けてるような気が」
「牧師?」
「いや、そんな大層なもんじゃないけど、
 言いたいことをざらっと、言い捨てていく、
 ような、感じで、
 つまりー・・・」
「王様の耳はロバの耳~!
 って叫ばれてるような?」
「そう!そうそうそういうことだな!
 うん、アンタ、表現うまいなぁ」
「ありがとう」
さらり、と出てきた笑みだったが、
さすが整った面だけあり、笑うだけでだいぶ好感があがる。
自分の胸が、警戒のねじを緩ませたのを感じた。
「でも考え方によっては、
 わざわざ君に報告するくらいだから、
 サリトは本当はその企みを、
 止めて欲しいのかもしれないよ」
「まさか・・・」
「だってね・・・、
 一つ聞くけど、
 それって君にはどうしようもない企み?
 頑張れば止められるもの?」
「んー・・・、そうだなぁ」
暴力担当のような恐ろしい男が、何時の間にか消えていたこともあり、
特に口止めをされていたわけではない小さな情報はいくつか、
漏洩してしまった覚えがある。
話術、という言葉があるなら、
彼の選ぶ言葉、彼の使う単語、例え、
そのすべてが意図的な文句であったよう、
静かな圧力を持った青の目の力も手伝い、ボーンを誘った。
そして気がつけばボーンは、
取り返しのつかない契約を結んでいたのだ。





「おい、生きてるか?」
「・・・おまえ、何故居る」
「っ」
浴室で気絶し、ぐったりと横たわったルカスを見つけ、
濡れた身を拭いて寝室に運び込んだ今、
思ったよりも早く目を覚ましたので、言葉もなく抱きしめた。
「・・・俺も好きだ」
電話口、言えずにいた告白をしながら、
想いを込めるよう腕に力を込める。
「この状況でそれを言うか、色男め」
「うるせぇよ」
ルカスからの電話を切り、事実を報告したところ、
エリックは一つ返事でキケロを解放した。
「っていうか、俺に報告してる暇あったらさっさと行ってろって話だよ」
定番、ちくりと棘を持って、しかし快くキケロを急き立てたエリックに、
必ず戻ると誓い、襲撃を受けたらしいルカスの元に走った。
「死んでんのかと思ったぜ」
「勝手に殺すな」
「野朗はのしといたぜ」
「ん?」
「てめぇをこんなにした馬鹿野朗のことだ、
 許せねぇ、あとでもっと殴る」
「・・・二人組は逃げ去ったはずだが、
 途中で会ったのか?」
「・・・俺がヤレたのは家に居た一人のみだ、
 もう一人居やがるのか?!くそっ!」
「待て、家に?・・・一人」
「・・・?」
「手を貸せ、その者に会わせろ」
「・・・おう」
何かよくないことをしたらしい、
ルカスの緊張が伝わって来て怒気が萎み、
キケロの胸は一変して焦りに浸された。
「・・・信じらんねーっすよ」
案の定、先ほど家内で見つけ、
叩き潰した敵は敵ではなく、ルカスの友人らしい。
玄関に近い階段に座り込み不貞腐れていた。
「こいつ突然俺のことぶん殴って来たんですよ?!」
「すまない、・・・動物的な男なんだ」
「・・・」
目を狙ったため、瞼を腫らしている男は、
乾いた鼻血を手の甲で拭きつつ、
肩の骨の調子を整えている。
軽傷で済ませ、見逃しておいて良かった。



12月5日(水)01:15 | トラックバック(0) | コメント(0) | 力シリーズ※メイン | 管理

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