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『力』(エリック他 キケロ×ルカス)-3




「退部?」
引退後も席だけは、置けることになっているバスケ部に、
この届けを出すことにはしっかりと理由がある。
夏の初めにゴドーは主力から去り、今は後輩の練習に付き合う、
コーチのような立場に居た。
「ああ」
「そんな・・・先輩、どうして・・・」
「喧嘩する」
「・・・」
「から、迷惑かけらんねーだろ」
「どうして・・・」
「どうしてって、するもんはするからよ、
 仕方ねーだろ」
困惑した二年の、部長の肩をバシバシと叩き、
困ったよう首を捻ると、
「な?」
説得するかけらもない、
ごり押しをした。
「そんなの、理由になりません、
 俺達には、まだ先輩が必要で、
 ・・・喧嘩なんて」
「悪いな」
取次ぐ気のない、言葉に後輩の目には、
怒りさえ見えたがゴドーは気にしなかった。
思い込みが激しく、やると決めたらやる、
典型的なB型の性格が、ゴドーを支配していた。
体育館の出入り口の端、
風が緊張を流し、後輩の怒りを覚ました。
「もし、喧嘩、上手く行ったら、
 戻って来て下さいよ」
「上手く?」
「だから、その、バレなかったら、
 っていうか、大きい怪我とかしないで、
 向こうの人が理解あって、どうにか、
 上手く・・・
 ああ、そんなことあるわけないじゃないですか!
 やっぱりやめて下さい喧嘩なんて」
「・・・我侭な先輩でごめんな」
ぽん、と頭に手を載せ、撫でてやると、
ゴドーよりも数cm、高い後輩ではあったが、
猫背になり、ゴドーの顔の近くへ頭を下げた。
「俺もバスケできなくなんのは辛ぇよ」
「だったら・・・」
ループしそうな会話を、
切るためにもペンッ、と勢い良く、
後輩の頭を叩き、ゴドーは去った。
「先輩、このこと、
 俺、言触らすかもしれませんよ?!
 戻って来てくれなかったら、
 言触らすかもしれません!」
「・・・性格悪いなーおまえ」
振り向きざま苦笑するだけ、
ゴドーの心は少しも揺れず、
後輩の怒りは悲しみに変わった。



「エリック・・・」
呆然とした顔のキケロの、
心中を察する暇もなく、
ゴドーの件の相談をしようと、開けた口が真横の壁際、
上半身を露出させたルカスを発見し閉じた。
放課後に消えたゴドーの行方を探し、
ルカスを訪ねたが不在で、キケロの宿舎に足を運んだ。
キケロの部屋のある古ぼけたその洋館には、
過去何度も来ており鍵もろくに掛けないことを知っていた。
「ルカ先輩・・・?」
「何だ」
洋館の一室、キケロの暮らす部屋は丁度、
ドアを開けて目の前がベット、左側にクローゼットや事務机、
本棚があり、右側にキッチンがある。
そのキッチンに続く壁の長さは3m程で、
考えるとなかなか広い部屋なのかもしれない。
「エリック、これは、その、何だ、あー」
「てめぇ勝手に人ん家入って来てんじゃねぇぞ!」
「っていうか、その格好」
「っ・・・」
「人の家で半裸って、どこの変態ですか?
 幾ら相手がキケロでも・・・、失礼ですって、
 そりゃ、アンタは暑がりだろうけど、
 こいつ、男だって犯すような人間ですよ、
 危ないって」
「・・・」
「俺、先輩のことは結構良く見てるっていうか、
 尊敬してるとこもあるんで、あんまり、
 馬鹿なことしないで欲しいんですけど」
「・・・すまん」
「危うく襲うとこだったぜ」
「ほら!キケロも迷惑してたみたいですよ、
 駄目だなぁ、もう、アンタ時々凄い馬鹿な時ありますよね、
 って、そんなこと言ってる場合じゃなくて」
「・・・」
エリック独特の緩やかな空気で、
淡々と進んでいく会話に置いていかれ、
すごすごと服を取りに行くルカスの、
下肢がすでにキケロの被害に遭っていることを、
エリックは知る由もなかった。
脱がされた服がキッチンの隅に飛んでいたので、
それを拾いに行く途中の出来事で、
固まったキケロと思考の停止したルカスの、
ぎりぎりの誤魔化しがまさか効くとは思わなかった。
「っ・・・」
服の下でキケロのものが、腿を伝った。
今エリックに助けを求めたら、キケロとの繋がりを絶つことができるだろう。
本来ルカスの望む肉体関係ではない、キケロとの付き合いが、
ルカスを疲れさせ、様々な隙を作っていた。
せめてキケロの弱みの一つでも、
握ることができれば良いが、
以前よりさらに注意力の衰えた、
ルカスにそれができるだろうか。



12月14日(金)23:28 | トラックバック(0) | コメント(0) | 力シリーズ※メイン | 管理

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