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『or』(ゴドー+キケロ×ルカス)-2 ※R16

「・・・」
席を立つとぞろぞろと、付いて来た友人等を目で牽制し戻らせ、
一人、やっと二人の元に足を運んだ。
「ゴドー・・・」
余計な行動であると、言わんばかりの顰め面で、
ルカスに迎えられ気分が落ちる。
キケロは能天気にまだルカスの肩や背を突いていた。
「おい」
声を掛けると待っていたよう、
キケロが値踏みをする目でこちらを向いた。
闘争心が騒ぎ、顔つきが自然と険しくなったのがわかる。
「席に戻れ、ゴドー」
「・・・」
そこでルカスのきっぱりとした、
命令が降りる。
「戻れってよ?」
挑戦的、ゴドーの気を害するよう笑うキケロを睨む。
「ルカ!」
助けろ、と命令をすれば良い、
ルカスの元、今まで自由にやって来た恩を、
いつかは返すものだと気楽に思っていた。
今がその時だろう。
「戻れ」
「・・・」
期待を裏切られ、困惑する心の揺れ。
ルカスの目は悲しむよう、ゴドーを見上げていた。
「すまん」
謝るのは反則で、何も言えなくなる。
ゴドーの胸に迫るのは、立場。
立場が、当然にルカスを助けようとしていた。
それは、問題の輪からゴドーを弾いた、
友人としてのルカスへの反感を凌いだ。
キケロとルカスの関係を知った日、自然に爆発した感情が遠い。
今、自分を動かしたのは、ルカスへの忠誠か、友情か。
迷った頭が、白くなり停止する。
「・・・これは、俺の問題だ」
「・・・」
ルカスの、起した喧嘩の代償が、
ルカスに降りかかっている。
止められた仲裁、命令と情が混合している。
ルカスの瞳の、薄い色素の奥はぼやけて、感情が見えない。
「っ・・!」
真剣なゴドーとルカスの重い空気を読まず、
ふいにキケロの指が、シャツごしに、
ルカスの胸の飾りを摘んだ。
「っ?!よ・・・せ・・・ッ」
ぐり、と絞る手の動きに合わせて、
びくりと揺れた肩、顰められた顔、
ルカスの隠すべき裏の顔が暴かれ、
「ッ!!」
「おぉ?!」
驚いたゴドーを他所、キケロは機嫌の良い声を上げ、
親しげにルカスを見つめた。
「おまえ、さすが・・・良い反応だなぁ、今の来たわ」
「・・・単なる痛みへの反射だ、独りで善がっていろ」
憎まれ口を利きつつ、胸に噛み付いたままの、キケロの指を必死に、
剥がそうとするルカスの所作が、子どもじみていて危うい。
「・・・っ」
案の定、簡単に取れるはずもなく指がまた、性的にそこを弄った。
は、と息をつき、ルカスの顔に緊張が走る。
「・・・やめろ」
小さく、心細気な懇願が聞こえ、耳を疑う。
「んっ・・・」
目に見えて、いやらしげな雰囲気に誘われつつある主人に慌てる。
教室内の空気は以前として賑やかで、
突っ立ったゴドーが丁度壁になっており、
背では恐らくクラスメイト達の、平凡な駄弁りが続けられているのだろう。
「・・・」
声をあげるか、腕を動かし、キケロの指を取り払ってやればいい。
固まったゴドーの脳裏には、手順だけはしっかりと出来上がっていた。
「っつか、おまえは結局、止めねぇのかよ」
そこで、馬鹿にしたような笑いと共に、ゴドーを正面から、
探るよう見つめて来たキケロの手が今度は、
腿に手を置き、何時でも擦ってやろうという意思表示をしている。
「何命令守って傍観してんだよ、おまえともあろう奴が」
「ッ・・・ルカ!」
「・・・」
叫んだのは果して、命令の要求か、仲直りの要求か。
「・・・おまえの手は借りん」
「何でだよ?!」
「何でもだ」
言い捨て、がたりと席を立ったルカスの退室をキケロが追い、
その場に残されたゴドーの胸には、黒く苦いものが渦巻いていた。
自分が、友の意思を尊重しているのか。
または、主人の命令に逆らえずにいるのか、
その悩みを忌々しく思う。






(2008 5/24)



12月9日(日)18:20 | トラックバック(0) | コメント(0) | 短編 | 管理

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