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『首・4』(キケロ×ルカス+ゴドー)-1





「・・・和解した?」
昼の教室の隅で、ゴドーの声は低く響いた。
「ああ」
数人のクラスメイトが周りに居たため、
怒鳴るのを堪え、ゴドーは静かにルカスを睨む。
「ふざけんなよ、昨日だっておまえ、
 あいつにいびられてなかったか?」
「どこをどう見たらそうなる、話をしていただけだ。
 俺達はおまえをこれ以上苦しめたくない、
 だから話し合って仲直りをしたんだ、ゴドー」
「・・・」
願うように待つのは、ゴドーが表情を和らげて微笑む様であり、
その瞬間に出会えればすべて、
これまでのこともこれからのことも、
耐えていけるような気がした。
「安心してくれ、もう何の問題もないんだ」
不安が表に出ないよう、明るいことを考えて笑った。
ゴドーやエリックと仲を深めた頃が、
ルカスの記憶に新しい、幸福な時間だった。
エリックの精神に、ゴドーの生活に、
世話を焼くことが好きで、二人の中に、
自分を見ることがルカスの幸せだった。
気を許せる空間がそこにあった。
「・・・満足か、俺一人蚊帳の外に出して」
だからこそ、ゴドーの冷たい声が肝を冷やし、
ルカスの思考を停止させる。
「棘のある言い方だ、俺はただ、」
「お前等にとって俺は何だ?」
「ゴドー・・・?」
「俺は頭も悪いし、・・・面倒くさい奴かもしんねーけど、
 おまえは俺をもう少し、信頼してくれてると思ってたぜ」
「・・・」
言葉に詰まったルカスに向かって、
ゴドーの、眉間に皺を寄せた皮肉気な笑いが向けられ、
険悪な空気が重い間を作る。
「解決できて良かったな、事後報告ありがとよ」
吐き捨て、読みもしない教科書を取り出し、
ルカスと壁を作ったゴドーの機嫌を、
どうすれば取り戻すことができるのか、
検討が付かず途方に暮れた。
廊下側に目をやればキケロがにやついている。
逃げるよう、ゴドーの前から去り、
キケロの腕を引き人の少ない階段に向かった。
「その様子じゃ失敗か?」
焦燥したルカスから事態を悟り、
キケロは笑みを引っ込めている。
「少し考えればわかることだ」
「あ?」
「あいつも馬鹿じゃない!
 俺達が、あいつを誤魔化そうとしたのがわかったんだ、
 怒っていた・・・!本気で・・・っ!
 ・・・嫌われた」
ぽつりと、切なげに呻いたルカスに顔を顰め、
キケロは首を捻った。
「おまえらデキてんのか?」
「蹴るぞ」
「・・・いや何つーか、
 妬けんなぁ、と」
「・・・おまえだってあいつに嫌われたくはないだろう?
 あいつは良い奴だ、凄い奴だ、
 エリックとのことも、本当は応援しているんだ、俺は!
 あいつが一番似合いだろうと、
 ・・・、本当は、応援して・・・!
 二人とも、好きなんだ・・・、だから、
 俺は、ただあの二人の傍に居たいだけで・・・」
混乱した頭が、心を洗いざらい言葉にしてしまい焦る。
止まらぬ告白をどうすればいいのか、考える余裕が欲しい。
「おい待て、聞き捨てならねぇだろそれ、
 俺忘れてね?エリックと俺は七年の・・・」
「幸福になりたい!
 あの二人の傍で」
「・・・」
ぼろぼろと涙の、零れていることに、
気づくより早くキケロの腕が身を捉えた。
「?!」
ルカスはすっぽりとキケロに抱きしめられ、
妙な安心感に包まれてしまっていた。
「何だよもう、おまえは・・・」
聞いたことの無い優しげな声は、
涙腺を刺激し、今まで溜めて来ていた辛さを、
すべて痛みの形で胸に運び込んだ。
「っ・・・」
「おまえのこと割と好きなんだよな、
 あんまり辛くさせたくねー、
 とか言ってスゲー矛盾だけど、
 全部俺が原因だもんな・・・」
ぼろぼろと、止まらない涙に気づかぬ振りをするよう、
独り言のようにぼんやりと喋ってくれるキケロが、
ルカスには妙に暖かく感じられて、
ぎゅ、と抱きつけば背を擦られた。
このまま守られていたいような気持ちを、
作り出す力が、その胸にはあった。
「このままマジで和解しねーか?
 もう、充分な気ぃして来たわ」
「何が・・・」
「サリトの奴も忙しいみてーでさ、
 アレ以来接触ねぇし、
 恐怖ってすげーよな、
 おまえにあいつの声聞かされた時、錯乱して、
 とにかく、どうにかしておまえを屈服させなきゃなんねーと思って、
 それと人が心底怯えてんの見て笑ってるおまえに腹立って、
 だから復讐してやんなきゃな、って思ったんだけどよ、
 ・・・もう充分だ、気ぃ済んだ」
「・・・」
「あとおまえ殻破ると可愛い」
「・・・どこの口が言ってる」
「これからはよ、おまえの都合とかも少し考えるし、
 対等っつーか等価交換的な・・・、
 喧嘩の出張とか、俺にできる用事は請け負う、
 だから、おまえの言葉で言う愛人っつーのか?
 そういうふうになれねぇか、俺等」
「・・・」



5月2日(金)01:06 | トラックバック(0) | コメント(0) | 首シリーズ※メイン | 管理

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