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『首・4』(キケロ×ルカス+ゴドー)-2




「つっても、俺の誘いには確実に答えてもらうわけだけどな」
「・・・それは対等とは言わない」
「この条件なきゃ、てめぇ俺のこと完全無視すんだろ」
「よくわかってるな」
「譲歩してるぜ、これでも、・・・気持ち違うだろ?
 おまえは俺にただ一方的に、脅かされる状況から、
 俺を利用することもできる立場になるんだよ、
 どうだ、サリトを除けば負け無しだぜ、俺は」
階段で長く抱き合うわけにはいかず、
ルカスはおずおずとキケロの胸を押した。
キケロは怒りも嘲笑も無い静かな話し合いの顔をしていた。
ルカスが返事を延ばしている間、喧騒の音が二人の間を、
微風のように走り抜けて行った。
一度、涙の痕を中指で拭くと、
ルカスの顔には笑みが浮かんだ。
「いつも、しているおまえは良かったろうが、
 されている俺は苦しいばかりだった・・・。
 おまえはどこを取っても最低な野蛮人で、
 好感の持てる要素が一つもない」
「・・・」
「大体、先に仕掛けてきたのはおまえだろう。
 蹴ったのは悪かったが、
 襲うと宣言されれば手を打とうとするだろう・・・、
 俺はこれまで自分の身は自分で守って来た、これからも」
「・・・」
キケロの暴言にルカスが飛び蹴りをした日、
仕返しにキケロが再び暴言を吐きに来たのは、
その日の放課後だったか翌日だったか。
ルカスの周囲にはルカスを欲望の対象にする人間もいる。
そういった人間に予防線を張るのは、
ルカスにしてみれば当然のことだった。
「だからっておまえ、突然サリトの奴を出すのは反則だろ」
「反省する気はない、俺はまだおまえを許していない」
「・・・」
言い切ると心なしか咽喉の支えが取れたよう、
すっきりとした胸が頭に冷えた風を送った。
「だよなぁ・・・」
どこかしんみりと、
声が聞こえ納得したような顔で、
横向くキケロが見えた。
「やっぱ無理か、
 おまえと俺が、
 和解とか・・・」
「・・・」
「はは、ちょっと・・・、
 期待しちまったろうが、
 抱きついて来やがって」
「おまえが抱き寄せたからだ」
「泣きやがるし」
「悪かったな、見苦しいものを見せて」
「可愛かったぜ」
「おまえ、それしか言えないのか、
 語彙の少ない男だな」
「・・・」
「ところで予鈴は鳴ったか?」
「さてな」
「何時頃だ、今は」
「・・・あー」
聞かれて自然と、腕に目をやったキケロが舌打つ。
あるはずの時計は先日ルカスに破壊されていた。
「不便だな」
キケロの、舌打ちの原因に笑みを浮かべるルカスと、
溜息をつくキケロの間に、先程までの親密さは影もない。
「さっさと新しいのを買ったらどうだ」
「昨日言ってた時計屋でも紹介してくれんのか」
「おまえが観測の手伝いをするならな」
「あ?」
「定期的な記録を取っている、
 この間邪魔をしてくれたおかげで、
 記録が少しぶれた」
「・・・また荷物を運び込めばいんだな?」
「ああ、観測は明々後日だ、忘れるなよ」
「・・・おう」
「ではまず時計屋か、早いほうがいいだろう、今日は部活を休もう」
「悪いな、部長さんサボらせて」
「ここのところ部員でもない連中の溜まり場になっていたしな」
「あいつらか・・・性もねぇな」
「おまえもその一人になりつつあるが?」
「エリックの奴が居るからな」
「ゴドーもな」
「・・・ってか、実際どうなんだ、あの二人、
 そんな良い仲なのかよ?」
「ゴドーはエリックに惚れている」
「そりゃ知ってる」
「・・・エリックもゴドーに惚れればいい」
「おまえ、あいつのこと愛人にすんじゃねぇのか?
 ってか、俺の質問を無視すんじゃねぇ!」
ふ、と笑みを浮かべて、怒鳴ったキケロをまるで相手にせず、
ただ探るようにやって来たルカスの、鋭く美しい視線がふいに、
キケロを少しの間固まらせ、居た溜まれぬ熱を作った。
「・・・」
「俺は、エリックの血を見ているんだよ、
 瞳の奥の遺伝子が好きなんだ、
 いつかおまえが言い当てたままさ、
 今でもあの人に縛られている、
 息子を手に入れてあの人の一部を、
 手に入れようとしている・・・」
昼の、明るさの中でも目の行く首元。
「こんな、浅はかな心で口説いているんだ、俺は、
 相手にされるわけもない」
落ち着いた声で、言い聞かすよう、
呟くルカスの肩を掴み引き寄せる。
「・・・よせ」
短い拒絶を無視してキスをした。
初めてルカスの身に欲情した時、
キケロの視覚を心地よく支配した、
この首には縄が掛かっている。










5月2日(金)01:06 | トラックバック(0) | コメント(0) | 首シリーズ※メイン | 管理

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