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『清く優しく』(キケロ×ルカス)-1 ※微裏


※R18を連想させる状況・発言が含まれて居ます。



朝の古い洋館は、周りに他の民家のない分、
普段は静まり返り不気味に、美しく日を受けて一日を開始する。
この日に限りその静寂が、けたたましい電子音で破られたのは、
洋館にある人物が招かれていたせいだった。
「起きろっ!てめぇ!!」
「なんだ朝から、うるさい奴だな」
耳元、あまりにも騒ぎ立てる目覚ましの音に、
キケロ・マグランは青筋を立てて苛立っていた。
ルカスの持ち込んだものらしい電子時計は、
止めるのに何故かパスワードが居る。
ルカスの持ち物にはいつも不思議が詰まっており、
キケロを悩ませるばかりだった。
「うるせぇのは俺よりコイツだろ、
 止めろ!この傍迷惑なポンコツ」
「俺の大事な持ち物を侮辱してただで済むと思うな、
 その内覚醒したら止めてやるから大人しく苦しんでいろ」
「ふざけんなよてめぇ!寝らんねぇじゃねぇかよ?!」
「ああ、うるさい、本当にうるさい、何の嫌がらせだ、
 わざわざ抱かれるためだけに出張して来たこの俺に、
 少しぐらい優しくしても罰は当たらんぞ」
「だから目覚ましを止めろっつったんだよ、
 嫌がらせはそっちだろーがよ?!」
「寝た」
「起きてんじゃねぇかよ、こら!」
「情夫の仕事はこなした、睡眠ぐらい取らせてくれ、鬼か」
「黙れ、俺が睡眠妨害されてんだよって、
 おい誰が情夫だ?!人聞き悪ぃな」
「今の俺は情夫と同じだ」
「・・・あのなぁ、俺だってなぁ、
 できたらてめぇと、その、仲良くだなぁ?」
「ならば俺に断る権利と時を選ぶ権利を与えてくれ、
 昨日だってな、本当は、見たい番組があったんだ、
 それをおまえは至急来い飛んで来い、
 ブチ込ませろこの性奴が、と・・・」
「どこのAV文句だ」
「うるさい、おまえに・・・寝る」
「おい!せめて言うこと言い終えてから寝ろよ?!
 聞きたかねぇけどなんか半端で落ち着かねぇだろ?!
 おい!!フィオーレ!!」
「寝た」
「っ」
けたたましい時計はルカスが戦線離脱し静かになっても、
空気を読まずに存在を主張し、キケロを音で包囲して行く。
低血圧も手伝い、キケロの苛立ちは最高潮を迎えた。
「あぁ~、うるっせぇ!止まれ糞時計!」
ミシリ、嫌な感触に一瞬ヒヤリとする。
自分の拳の破壊力を、これほど憎いと思ったことはなかった。
時計はキケロの拳骨を食らって死んだ。
「・・・」
「貸してみろ」
寝た、と宣言しておいてやはりしっかりと起きているルカスの、
冷静な声が聞こえびくりと身を揺らす。
「直る・・・か?」
「修理をすればな」
キケロに殺された時計を天に仰ぎ、
ルカスの目はもうぱっちりと開いていて焦る。
「フィオーレ、なぁ、弁償とか、してやってもいいぜ?」
物に妙な執着のあること、ルカスの普段の発言や部屋、
物達への愛を語る際の、生き生きした表情が思い出される。
パタリ、と力なく倒れ、時計を抱えたまま蹲った姿は、
なんだか子どもじみて愛しい。
「弁償で、この罪が償えると思うか」
「・・・思いません」
「・・・ならば、今日一日は清く優しくデーだ」
「あ?」
「簡単だ、おまえが、俺に清く優しく接する、
 それだけだ、・・・それで、許してやる」
「・・・」



5月3日(土)22:38 | トラックバック(0) | コメント(0) | 短編 | 管理

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