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『愛犬の所在』(ゴドー×エリック)-1


放課後の教室、同学年の友人ができてから、
週一でしか顔を出さぬようになっていたエリックが、
近頃、どういうわけか以前のように、
連続してやって来ている。
「またルカ先輩いないの」
「・・・ああ」
窓際の最後尾、ゴドーは自席に座ったまま、
後ろ戸から顔を出したエリックに返事をした。
家が近い他、従うべき古くからの関係に基き、
帰りを共にしていた友人、ルカスはここのところ不在だった。
いつもは互いの出席するべき放課後の用事が済み次第、
教室で待ち合わせていたが、
ここのところ毎日、向こうの不都合の連絡が届けられる。
「もしかして今日もキケロ?」
「だろうな」
原因は知っている。
「・・・ここんとこずっとじゃない?
 そういえば昼も部室に居たよ、あいつ、
 最近ホント仲良いよねあの二人・・・」
「ああ」
こちらに、歩いて来るついでに口を動かすエリックの、
軽い調子が心地よく、気の抜けた心が少し息を吐いた。
「今度忠告してあげないとなー、
 キケロすぐ手ぇ出すから、男女問わず」
「・・・しょうもねぇな」
「しょうもない奴なんだよ、ほんと」
諸悪の根源であるキケロの軽さへ、
憤る心が正直に愚痴を零し、エリックの同意が嬉しい。
「ていうか、ゴドーは何でハブられてるの」
「・・・何でだろうな」
ふいに傍に立たれていることに気づき、心臓がきつく絞められて痛んだ。
その痛みがエリックを意識するためのものか、
友人の不和に無力な自分を嘆くためのものか。
「眉間しわ寄ってるよ」
「・・・ああ」
進学に生活の端々に、援助を受ける代わり、
将来の忠誠を誓っている家の子、
ルカス・フィオーレは君主であり友人で、
ゴドーは今まで、この関係に疑問を持ったことはなかった。
遠慮に鈍いゴドーだからこそ上手く友情を続けてこれたのかもしれない。
同じくエリックに対し、忠誠義務のあるキケロに、
屈託のないゴドーのルカスへの友情は奇異に見えたらしい。
『おまえってフィオーレのこと疎ましく思ったことねーの』
『・・・おまえはあるのか?エリーに対して、そういう・・・』
『バリバリあったな!!・・・偉そうにしやがって、とか、
 なんでこんな奴の言う事聞かなきゃなんねーんだ、
 とか、まぁ、惚れてからは気になんなくなったんだけどよ』
『・・・へー』
『・・・あれ?!逆か?!
 惚れてからのほうが敏感だったかもしんねーな、そこんとこ、
 ・・・なんかホラ、こっちの親切全部、当然になっちまうだろ?
 なんか、そういう関係だから優しいとか心配するとか傍にいる、
 とか思われんのがヤだったっつーか』
過去、昼休みの他愛ない会話の中、
状況の似た者同士で木の下、晒しあった心が今になって耳に響く。
『おまえはどうなんだよ』
『いや別に、普通だな』
『まぁそっち完全友情だもんな、イヤ、でも俺だったらその場合も、
 なんかモヤモヤすると思うぜ、あー・・・おまえもなんか言えよ』
『や、正直俺よくわかってねーんだと思うわ』
『おーいーっ!考えろよーっっ・・・コレおまえの問題ーっ!』
『まーそうなんだけどな、考えるの苦手だからなぁ、
 おまえ考えろよ』
『なんでだよ』
『俺とルカって何だ?』
『「ほーらゴドー!ごはんだぞ!」「ワンワン!」
 「よしよし、骨っこはおまえの大好物だったな!そーらとってこい」
 「ワンワンワーン」』
『・・・』
『ちなみに俺とエリック!
 「キケロ、駄目だ俺とおまえは身分が違う・・・」
 「そんな壁、俺が壊すぜ」
 「あっ、キケロ・・・駄目だって」
 「エリック」
 「キケロ」
 「エリック・・・」
 「キケロ」
 「エリ・・・」』
『待て待て待て』
『なんだよ、不満か?』
『だいぶ不満だ』
『しょうがねーな、じゃぁそっちもいやらしテイストにしてやるよ!
 「ゴドー、こら、じゃれつくな!あっ!ど、どこを・・・」
 「ワンワンワーン」』
『結局俺は犬かよ?!つかやめろ!
 いやらしテイストとか!!』
『照れちゃって』
『うっせ黙れ!誰が照れるかよ!・・・てかおまえ、
 喋ると二言目には必ずシモに走んのどうにかしろ』
『真面目にばっか行くと暗くなんだろ、
 結局俺等はあいつらにとって、都合良い人間でしかねーってことだ、
 生まれた時に金持ちか金持ちじゃねーかってだけで、
 関係の間に妙な差ができちまう・・・なんか遣り切れねぇよな?』
『・・・気にしなきゃいいんじゃねーか?』
『気になっちまうんだよ、俺は!いいな・・・、おまえは単純で』
厭味でなく純粋に、キケロの目はゴドーを羨んでいたこと。
キケロの内部をぐるぐると回る悩みは、ゴドーには理解できなかった。



5月3日(土)22:44 | トラックバック(0) | コメント(0) | 短編 | 管理

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