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『リオネ・シュトール』(エリックとクラスメイト)



美形にコンプレックスがあるわけでも、女を取られたわけでもない。
「なぁ」
「・・・ん?」
声を掛けると笑って、・・・明らかに作り笑顔。
顔を上げたこの男を、俺は生理的に嫌っていた。
「何か用、リオネ・シュトール君」
「・・・リオネ」
フルネームで聞き返すあたりが地味に嫌な気持ちにさせる。
「おまえってさぁ、いっつも一人でいるだろ、何で?」
「リオネ、お仲間8名の中に不正者が5名いる、名前を上げようか」
「・・・」
「1名はもう挙げてあるから、残り4名の名を」
ああ、だからフルネームで俺を。
なんて納得している場合ではなく、涼しいエリックの顔を引っ叩いてやりたいのを堪える。
不正とは恐らく煙草や煙草や煙草や・・・のレベルから俺に関しては退学レベルのものがある。
「一人でいるから何、先生に俺と仲良くしてあげてって頼まれたの?
 仮面優等生の癖に!ご立派!」
「・・・ゴドー先輩」
「・・・は?」
「ゴドー先輩が、心配してたんだよ!!」
「・・・」
「おまえ、三年に呼び出されたり、も、してるし」
「・・・」
「ってかさ、おまえとゴドー先輩ができてるって話ホントか?
 それかルカス・フィオーレって奴と、どうなんだよ?」
がつん、と珍しく受身を取り損ねたまさかの一撃。
「・・・リオネ・シュトール」
「フルネームやめろ!」
殴られたらしい頬を抑えつつ怒鳴る。我ながら的外れな反撃。
「今後俺の前でその話題口にしたら明日には席が無い」
「脅す気かよ、俺を」
「・・・警告だよ、ただの」
「調子乗ってんじゃねぇ」
「調子乗ってんのはどっち?」
ばん、と机を叩き珍しく笑ってないエリックは必死だった。
「・・・」
それがもの凄く嬉しい俺は何だ。
「ただ少なくとも先輩はおまえに惚れてんだろ?!」
「・・・っ」
ひくりと、引きつった笑顔に気持ちが高ぶる。
「毎回毎回おまえの話題出すし、
 心配してんのはまじだよ、だから、
 報告してやったけどね!
 至るとこに壁作ってちくちく攻撃ばっかして孤立してますってさ」
「壁?」
「・・・一歩引いて見下して、そんなんで他人に相手されると思うなよ」
「・・・」
「喧嘩もまともに買えねぇとか、終わってんだろ」
「・・・リオネ」
「・・・何だよ」
「さすがはあいつの後輩だね」
「・・・は?!」
「心配どうも、一人は結構寂しいもんだよ」
脆そうに顰められた顔、に一瞬魂を抜かれた。
予期せずに出会った表情。
「それで、君はあいつに俺の、
 友達になれって頼まれたの?」
「別に・・・」
心なしか柔らかに見えた瞳に胸が熱くなり、
下をむくと緩やかに笑う声が聞こえた。
「次はもう少し手加減してあげるから、
 懲りずにまた売ってね、喧嘩」
ふてぶてしい台詞と共に、いつもの作り笑顔に戻る。
「・・・そういうとこが駄目だっつってんだろ」
「ん?」
「喧嘩とかじゃなくて仲良くしてよとか言えねぇのかよ」
「・・・喧嘩とかじゃなくて仲良くしてよ」
「いいよ」
「・・・」
「とかもしかしたら言うかもしれねーじゃん」
「あ、今の再現?」
「再現」
「何だ、残念」
「・・・まったく残念がってるように見えねーんだけど、馬鹿にしてんのか、
 おまえと話してると本気で疲れるよ」
「ごめんね」
「作り笑いむかつくし」
「・・・」
溜め息をつくと困ったよう、曖昧に首を傾げたエリックは目を逸らす。
そのことに何の意味があるのか、知りたいと思う俺は何だ。
「じゃあな」
場を離れて視界に、エリックがいなくなって、
席に着くとした会話の再現ばかりが脳裏を過ぎ腹立たしい気分になった。




(2007 8/17)



5月4日(日)20:55 | トラックバック(0) | コメント(0) | 短編 | 管理

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